日本人は物が多いと言われ、収納のカリスマ的な人があれこれ雑誌でそのテクニックを披露しているのをよく見かける。
ちょっとした隙間を活用したり、トリッキーな仕掛けをしたり。正直そこまで作り込んでも使いこなせるかは疑問が残る。
いつしか収納のために収納を造っているような気がしないでもない。
収納とは納める価値のあるものを納めて初めて収納の価値が出ると思う。それは高価な品ということではなく頻繁に
登場するものは価値が高く、奥に奥に詰められどこにしまってあるかわからないものはもはや価値がないに等しい。
物=豊かさ という高度経済成長を経て、現代人は物から事へシフトしている兆候がみられるものの、
デカすぎるテレビはバブルの名残りか、家電量販店からの怪しげなセールストークにより巨大化は続いている。
テレビの大きさは室の大きさに対してバランスを大事にしなければならない。黒くてテカテカした物体が居間の真ん中に
単体で鎮座しているのは違和感を感じないだろうか。
大きなリビングで大きなテレビであれば、テレビボードやその周辺の収納や棚が同じかそれ以上のボリュームがなければ
またテレビ一人勝ち状態が続いてしまうだろう。
靴やコートを納める玄関周り、食品や食器を納めるキッチン、ユーティリティ、寝室のクローゼットなど意識出来る収納は
イメージできる。
しかしこれら以外の例えばホール、リビングとダイニングの間、ベッドサイドなどは常々家具で揃える方が望ましいと
思っている。
全ての収納が建築でなされた場合、その家にはテーブルランプを置く場所はないだろう。
彫刻は?植物は?どうであろうか。
写真にあるようなサイドボードは本をしまうにちょうど良く、調度品が置かれ、怪しげ?なお面が浮かないように
バランス取ってくれている。上部が抜けている分部屋は狭く感じないし、移動が出来る事も利点である。
別に箪笥でも良いし金属のラックでも構わないと思う。
そして家具収納の最大のメリットは「価値の再考」にある。物の量に合わせて収納を買う。
物が増えると収納家具も買うわけだが、収納家具だって安くはない。
本当に入れる価値があるのかを考える機会を与えてくれるのが収納家具のメリットだ。そこには工夫もあるだろうし
我慢も伴う気がするが、上手な物との付き合い方が豊かな暮らしの一歩であることは間違いない。